――赤ずきんちゃん異聞――  1000Hit



 語り部が奏でる低い旋律と物語。

―昔々ある所に赤ずきんちゃんという女の子が居ました。
 ある日、あかずきんちゃんはお母さんのお願いで病気で寝込んでいるお婆ちゃんの所へお見舞いに行くことになりました。―

「へー。」
「…。り、リーエス!リーエスの出番だよ!」
猟師の衣装を着たガルガードがリーエスの肩を叩いた。
 太陽はエルフの森の真上にあった。此処は小さな小屋の前。以前はメビウスという青年のものだったが、今は一人のエルフの出
張診療所となっている。
 さて、今此処で何が行われているのかというと、見ての通り、赤ずきんちゃんのお芝居の練習である。何故このような事をして
いるかといえば、リーエスとガルガードがクリスマスに聖堂の孤児院でお芝居を見せる事になっているのだ。そのために、友人に
頼みこの人の少ない森の中で稽古をしているというわけである。
「あ…あ、そっか!」
リーエスは慌てて小道具の籠―中には林檎やお茶の入った瓶―を持ち、被った赤ずきんの紐を直すと小屋の前に立つ。今は赤ずき
んちゃんの家の前という設定だ。
 そして、扉の前にはお母さんが一人。
「…何で俺?」
お母さんの衣装を着せられたオウだった。
「あ、はは!仕方なかったんだよぅ!他に人が居なかったからさ。」
「あの時ジャンケンで勝ちさえすればっ…」
「おい、いい加減先に進んでもいいか?」
呆れたような低音の声が樹の上からした。緑の中に朱色。
「あ、ごめんだよ、メリィド!」
リーエスは朱色のエルフ――ナレーション役のメリィドへ謝ると、「さ、始めよう。ちょっとやったらお母さんの出番終わりだか
らさっ!」
「嗚呼…。」
オウはがっくりと肩を落とした。メリィドはそれを面白げに見やり、とっとと始めてくれと言わんばかりに手を振った。
 悔しそうなオウを他所に、お芝居が始まった。

「それじゃあお母さん、行って来るね!」
「気をつけるのよ、リー…じゃなくて赤ずきん。」
「ぶふっ!」
オウの母親の優しげな微笑みに噴出すリーエス。
「リー…」
「ご、ごめっ…つい!」
オウの目が据わり、リーエスは慌てて謝った。オウは溜息するとふと、外野へ。
「ガル…メリィド…?」
必死に笑いをこらえるガルガードと、隠すことなく笑うメリィド。
「…え!?あ、ご、ごめん!あんまりはまってたからさ!」
「嬉しくねぇ!」
「くくっ、中々お似合いだぜ…?」
「くそ、てめぇら…!」
「うあぁっ!」リーエスは今にも飛び掛りかねないオウの腕を押さえ、
「あ、あともう少しなんだよぅ!お母さんの台詞たった三つだよっ!?ね!」
「…くそー…っ。」
再びお芝居再開。

「それじゃあお母さん、行って来るね!」
「気をつけるのよ、赤ずきん。」
「(一同、笑いを堪え。)」
「…。忘れ物はない?」
「…オウ、地声じゃだめだよ…!   ひぃっ!?」
つっこんだガルガードは後づさった。オウの邪笑が向けられたからだ。
「…誰の、せい、だ?」
「ご、ごめん…」
「ごめんだよぅ、もう笑わないよぅっ。」
本気できれそうなオウに、リーエスとガルガードは真面目に謝った。唯一、メリィドだけは忍び笑い。
「…まぁ、いい。受けた以上、最後までやり通すよ。」
「…ありがとうだよぅ。」
リーエスは微笑む。そして三度目。

「それじゃあお母さん、行って来るね!」
「気をつけるのよ、赤ずきん。忘れ物はない?」
「うん、大丈夫!じゃ、いってきまーす!」
手を振り、駆け出すリーエス。
「どうやら次のシーンに行けそうだね。」
「そのようだな。」
ガルガードはほっとしながらオウの次の台詞を待ち。
「…。」
赤ずきんがお母さんに手を振ったまま森の入り口――と想定した場所――に着く。
「…。」
このままだと姿が見えなくなってしまう。
「…。」
ちょっと駆け足をスローモーションに。
「…。」
「ねぇ、次の台詞言おうよ、オウっ!」
リーエスは思わず駆け戻ってオウをガクガク揺さぶった。
「いや…」
オウは揺さぶられながら。

「自分の娘を赤ずきんって呼ぶのって何か変じゃねぇ?」

「…。」
「さぁ、次行こうか!」
「人間ってなぁ、わかんねぇな。」



―家を出発した赤ずきんちゃんは大きな森に入った。すると、森を歩いている赤ずきんちゃんに一人の猟師が声をかけてきた。―

「そそそそ、そこのお嬢さん!」
「ぶー!」
「えぇ!?」
リーエスは手でおっきくばってんを作った。
「もぅ、どもりすぎだよ!」
「だ、だって何か緊張しちゃって…」
「そんなんじゃ子供たちの前でお芝居できないでしょっ?」
「ごめん…。」
うなだれるガルガード。
「緊張しないためにはね、―――」

「なぁ。」
緊張しないためのおまじないを伝授しているリーエスとされているガルガードを眺めながら、オウは樹の上に声を投げた。もうす
でに普段着に着替え済みである。
「何でガルが猟師なんだ?」
「ふん?俺に聞くな。」
「まぁ、それもそうか。…なーんであいつが狼役じゃねーんだろうな。狼獣人なのに。」
「そんな事、考えるまでもなくあれを見ればわかるだろ。」
「え?」
あっさりと言うメリィドをオウは不思議そうに見上げた。メリィドは台本を膝に置くと、立てた片足に腕を乗せ。
「あれが怖い狼か?」
「…納得。」
ガルガードは真剣に手のひらに三回書いた人の文字を飲み込んだ。

 赤ずきんちゃんは森を歩いている。すると少し先に一人の少年が見えた。彼は赤ずきんちゃんに気づくと、手に持っていた銃を
背中の袋に突っ込む。怖くないよ、と。
「そ、そこのお嬢さん。」
ガルガードは上ずりかけた声を必死に正す。
「こんな森の中で何やってるの?」
「おばあちゃんんのお見舞いに行く途中なんです。」
リーエスはガルガードの必死な様子に少し微笑みながら、ちょこんと籠を持ち上げて見せた。
「そうか。…しかし、危ないよ。」
「え?」
「最近、怖い狼がこの辺りをうろついているんだ。」
「まぁ!」
「気をつけるんだよ?」
「はい、ありがとうございました。」
赤ずきんちゃんは頭を下げた。猟師は一つ頷くと、森の奥へと入っていった。

「はい、カーット!」
「こここ、こんなんで良かったのかな!?」
「まぁ、今までよかずっと良かったんじゃないか?」
くくくと喉を鳴らしたのはメリィド。
「良かったね、ガル!ちゃんとできたよ!」
嬉しそうにリーエスはガルガードの手をとった。
「まぁ、あれだけやれば…ごほごほ。」
オウは言葉を飲み込み、台本で膝を叩き。
「さ、次のシーン行こうか。」
そろそろ日が暮れそうだった。



「…おい。」
次のシーンにぴったりの場所はもう選んである。そこに辿り着くと、なぜか辺りは殺気で満ちていた。
 その大元は一目でわかった。ひたすら此処で待たされていた一匹の狐だ。
「しゅ、シュコウ…」
「ここでちょっと待っててくれと言ったのは誰だった?」
「お、俺かな…。」
ガルガードが小さく手を上げた。
「……ちょっと?」
「うわああ、ごめんごめんごめんよーー!」
「本当に本当にごめんだよぅっ!」
以下10分謝り倒す。

「で、何で俺をこんな所で待たせてたわけだ?」
空は赤くなっている。すっかり辺りは薄暗い。狐は樹の根元に座り、大きく溜息をつくと問うた。
「じ、実は…」
「シュコウにお願いがあるんだよぅ…」
「お願い?」
嫌な予感がするとばかりに、シュコウは器用に眉間にしわを寄せる。
「あの、赤ずきんちゃんの狼役を…」
「断る。」
迷わず即答。
「そう言わずにお願いだよぅっ!ねぇ、ねぇっ、シュコウ!」
「子供たちのためなんだ!お願いだよ、な!」
「いやだ。面倒くせぇ。」
「うわぁんっ、シュコウー!」
「オウ!お前も説得手伝って!」
「えー…。」
すっかり傍観者となっていたオウは嫌な顔をする。何せ相手はあの狐だ。お芝居などというとことん面倒くさいこと、するわけが
ない。
「とにかく俺はやらん。じゃあ帰るぞ。」
「待って待って!」
「ストーップだよっ!」
「はーなーせー!」
狐に縋り付くリーエスとガルガード。
「お願いっ!ちょっとだけ!」
「いやだ!」
「本当にちょっとだから!」
「絶対いやだ!」
ぎりぎりぎり。拮抗する力。
「リー、ガル。諦めたらどうだ?別にシュコウじゃなくても…」
「駄目だよぅ!本番は狼の獣人さんが狼役なんだもん!」
「俺は狐だ!」
「他にいないんだから!」
「ガルガードが居るだろうが!」
「うるさいっ!ほっといてくれ!」
降ろされたことを実はちょっと気にしていたガルガード。
「はなせー!」
「いやだー!」

「やれやれ。」

この現状を解決したのは、意外にもメリィドだった。
「おい、伝言だ。」
「…俺に?誰からだ。」
シュコウは二人にひっつかれたまま、上を見上げる。
 メリィドは肩を竦めて見せた。そして淡々と…
「勿論二人を手伝うよな、だと。」
「…。」
「誰からと言われれば、同胞の医者からだが?」
シュコウはぴくりと耳を動かし。
「ったく、…面倒くせぇ…。」
その場に大人しく座り込んだ。



―赤ずきんちゃんは更に森を行く。すると今度は、背後の茂みがガサガサと鳴るではないか。赤ずきんちゃんは慌てて振り返り…―

「だ、誰!?」
「美味そうな娘だな。」
水を含んだようにくぐもった声が茂みの中から聞こえた。しかし姿は見えない。森はすでに闇で覆われている。
 赤ずきんちゃんはビクリと身を震わせ、その見えない恐怖から数歩後づさって。
「だ、誰なの?」
「俺か?俺はな…」
ガサガサガサ!

「狼だ!!!」

「本当は狐だけどな。」
「シュコウしゃべるなよ!」
オウのつっこみにシュコウは肩を竦めた。辺りはもう暗い。空には星が輝きだしている。
 シュコウが狼役をやることの条件は「喋らない事」だった。つまり、狐の姿は貸すが、台詞は言わないと。
 仕方なくシュコウが動きを、オウが台詞を担当することになる。だから見た目は面白いものだ。シュコウが隠れている間は、オ
ウの迫真の演技で辺りを緊張が取り巻くが、ひとたびシュコウが姿を見せると下手な腹話術。
 今も、シュコウはただ立ち上がっただけなのだから。ちなみに、茂みを揺らすのはガルガードの役だった。
「もうちょっと迫力つけねーか、シュコウ。」
「めんどくせぇ。」
「オパールに言い付けちゃうよっ?」
「寧ろあいつが狼役やった方がいいんじゃないか?」
「ふん?そいつぁ名案じゃねぇか。」
同意するメリィド。
「そんな事言うもんじゃないんだよぅっ!」
「ぎゃ、カラス!」
「うげっ、靴紐切れた。」
「…。さぁ、やるか。」
カラスと格闘するガルガードと切れた靴紐をどうにかしようとしているオウを横目に、シュコウは自ら茂みに潜った。
「くくくっ。」
メリィドは可笑しげにそれを眺めている。


それから…


「お前を食ってやるー!」
「きゃー!」
「ま、待てぇ!」
「お、お前は!」
「狼、やっと見つけたぞ!俺が退治してやる!」
パンパン!
「くそー。此処はひとまず退散だ!」
ガサガサガサ
「待て…!…くそ、逃げられたかっ。」
「あの、ありがとうございました、猟師さん!」
「何、これが俺の仕事だから。それじゃあ、俺は狼を追うね。気をつけるんだよ!」
「猟師さんも気をつけてー!」


…そして。


「やっと…」
「やっと、だよぅ…」
「やっとだ…!」
疲れた様子で次の舞台へ歩く三人。シュコウは一人平然と歩き――何故なら動きしかやっていないからだ。メリィドはもう先を行
ったようだ。
「やっと山場だよぅ!」
「終わりももうすぐだね!」
「もうこんな暗くなって…。」
オウは空を見上げて力なく溜息した。
「んで、次はどんなシーンなんだ?というか何故俺までついていかなきゃならん。」
「え?」
「俺の出番はちょっととか言ってなかったか?」
「ぇーっと…」
「…おい。」
ガルガードとリーエスの素直な反応にシュコウの視線が鋭くなる。
「さ、さぁ!もうすぐ目的地だ!」
「俺はもうや―――」
「やらないなんて言わないよね?ねっ?」
「いや、だから。」
「一緒にやってくれるよな!な!?」
「だから人の話を―――」
「シュコウ。…諦めろ。」
オウが彼を肩を叩いた。狐はがっくり肩を落とし…
「面倒くせぇ…」
「さぁ、行こうー!」
「おー!」

「って、待て。」
次の目的地についたシュコウは愕然とした。
「次は狼がお婆ちゃんを食べちゃうシーンだよぅ。」
「おいおい、まさかそのお婆ちゃんって…」
目の前には明かりの灯った小屋。先ほど赤ずきんちゃんの家であった其処は、今度はおばあちゃんの家になったらしい。
「うん、そう。」
「オパールがお婆ちゃん。」
「ありえねぇ!」
シュコウは思わず吼えた。
「あれが病気の婆ちゃんってたまか!?病気のほうから逃げるだろ!」
「ほら、そこは役だしさ!」
「じゃ、頑張ってね、シュコウ!」
「!」
リーエスとガルガードは扉の前までシュコウの背中を押していった。
「マジ?」
「「まじまじ。」」
「っくそー…   もうなんでもやってやらぁ!」



「あーあ、はいってっちゃったよ。」
「そのようだな。」
オウとメリィドはその様子を少し遠くから見ていた。メリィドは相変わらず木の上で…。
「なんか、もうやけくそみたいだな。」
「夜ぁテンションあがるようだからな、人間というやつは。ああ、あいつは半分獣だったか。」
「シュコウのやつ、あかずきんちゃんの話知らないのかな。」
「そうなんじゃないか。」
メリィドが頷くちょうどその時、シュコウは勢い良く扉を開けた。
「あーぁ、…馬鹿だなぁ。」

このシーンは赤ずきんちゃんも猟師も関係ないのに。



バァン!
「おらあぁ!食っちまうぞババァ!」
「あぁ?」
力の限り開いた扉、いきなりのシュコウの口上にオパールは仕事の手を止めてうるさそうに振り返る。
「…なんで寝てねぇんだよ。」
「は?」
「このシーンは病気で寝てる婆ちゃんを狼が食うシーンだろ。」
暫くわけがわらない様子で首を傾げる白髪のエルフ。少し立つと思い当たったのか、「ああ。」と呟きペンを置いた。
「お前たち、まだ芝居の練習をしていたのか。」
「そうだよ、悪いかよ。」
「別に。」
オパールは軽く肩を上げると、メガネを机の上に置き、椅子にかけた上着をはおった。
「それで、私は何をやればいいんだったかね。」
「ベットで寝てりゃいいんだよ。」
「ほぅ、そうか。」
頷き、素直にベットへと向かうオパール。シュコウは「病人っぽくするんだぞ。」とその背へ言った。
「はいはい。」
後ろ手を振ると、オパールはベットへ入る。枕に背を凭れ、シュコウの方を見て。
「これでいいかね?」
「おうよ。」
シュコウは外へ出て、扉を閉めた。やり直すためだ。

バァン!
「おらあぁ!食っちまうぞババァ!」
「誰だい。」
「狼だよ。見ればわかるだろう。」
「ああ、そうかい。最近目が悪くなってしまってね。」
「もうちょっと怯えろよ。どんな肝の据わった婆ちゃんだ。」
「おや。そのままでやってくれて構わないとリーエスは言っていたが…?」
「リーエス…。」
自分には迫力だのなんだの求めたくせに、とシュコウは舌打ちした。実際に求めたのはオウだったのだが…。
「で、何の用かね。」
「お前を食いに来た。」
「ほう。」
「それだけかよ!」
あっさりとしたオパールの反応に、シュコウはつっこむ。
「だからもっとこう…演じろ!」
「お前からそんな事を言われるとは思ってもみなかった。」
「うるせぇ!」
吼え、シュコウはズカズカと足音をたててベットへ近づいていく。
「とにかく、お前を食う!そしてさっさと終わらす。」
「そうかい。」
シュコウは手を伸ばし、エルフの肩に手をかけて…。

「……。」
「……。」
「…なぁ。」
「何だ。」
「で、俺はどうするんだ?」
「老婆を食うのさ。」
「食ってそれから?」
「その姿に成り代わり、赤ずきんを待ち伏せる。」
「赤ずきんを食うためか。」
「そうだよ。」
「で…最後は赤ずきんを食うのか?」
「いいや、猟師に殺される。」
「そうか。」
シュコウは天井を見上げて首を傾げた。
「婆ちゃんはどうなるんだ?」
「うん?」
「食われた婆ちゃんはどうなるんだ?」
目の前の白髪のエルフはくすりと笑った。
「猟師が腹を切って助け出すんだよ。」
シュコウは目を丸くした。それから、はっと嘲笑した。

「御伽噺だな。」
「御伽噺さ。」

 そしてエルフの肩にかけた手を離す。訝しげに首を傾けたオパールは視線で言う。「食わないのか?」と。
 シュコウはエルフを見下ろし、苦笑気味に言った。
「…くわねぇよ。」
空には満天の星。



「シュコウ、本当に行っちゃったね。」
「な。てっきりめんどくさいって言うと思ったのに。珍しいなぁ。」
「本当だね。」
「別にこのシーンはやらなくても良かったのに。俺もリーエスも出ないんだから。」
言うガルガードに、リーエスはしーっと指を口に押し当てる。
 二人は視線を交わして、くすくすと可笑しそうに笑った。冬の凛と冷たい空気が心地良い。
「面白かったね。」
「うん、面白かったな。」
「本番はうまくできるかな?」
「うまくできなくてもいいよ。」
リーエスは首をかしげ、「何で?」と聞く。
「うん。うまくできなくってもさ、楽しくできて、楽しんでもらえればいいじゃん。…あ、これってうまくできたってことになる
のかな。」
ガルガードはちょっと眉を寄せると、うーんとうなる。リーエスはそれを見て、微笑む。
「そうだね。」
「ん?」
「楽しく出来れば、いいよね。」
「…うん。」
リーエスの笑顔にガルガードは頬を赤くして。それを隠すように勢い良く立ち上がった。
「でもさ!」
「ぅん?」
「猟師は馬鹿だよな!」
「ぇ?」
「守りたいんなら、一緒に行けば良かったんだよ。」
リーエスは立ち上がったガルガードの背中を見上げて笑った。
「だって、猟師は別に赤ずきんちゃんと何の関係もなかったんだよ?」
「うん。」
「狼を捕まえる方が大切なことだったんだよぅ。」
「うん、そうだけど。…だけど。」
ガルガードは急に口を噤んだ。
「…どうしたの?」
「…俺は、さ。」
身体の脇でぎゅっと拳を握っているのが、リーエスには見えた。
「俺は、一緒に行くからさ。」
「…。」
「猟師は、ついていかなくても。俺はついてくよ。」
少年は振り返り、「赤ずきんちゃんがリーなら。」そういって、にっこりした。
「…うん、ありがと。」
満天の星が二人を照らす。



「青春だなぁ。」
「ふん?羨ましいのか。」
「ちょっとね。あんたは?」
「女は後腐れないほうが良い。」
「ははっ。」
夜の紺青に映る朱を見上げ。
「――らしいねぇ。」
台本をぱたりと閉じた。



 小屋から女の声がする。夕食にしよう、と。
 赤ずきんも、狼も、猟師もお婆ちゃんもお母さんも、それから語り部も。幸せな晩餐がその舞台で開かれる。

―――違った結末が此処にはあった。


                                     ―――END


。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。

あとがき

ほんとはこれを絵におこすつもりだったんだ。でもなんだか勝手に話が頭の中
で展開してしまったのでこうして文章化。(笑
ていうか赤ずきんちゃんの話も実はうろ覚え。猟師ってどこで出てきたっけ?
シュコウ、リーエス、1000Hitおめでとう。
一応二人メインでいくつもりだったけど、微妙に違ってたな。いや、でも二人
がメインよ?
オウとメリィドとガルガードは友情出演でふ。勝手に出してしまい申し訳ない。
苦情は随時受け付けております!
というか、こんなの自分じゃない!とかこれは変だ!とか思ったら私へメール
下さい。(オロロ

取り敢えず。書き終えて満足。今度はこれを絵にしたい。(笑